単式、連続式?ウイスキーを学ぶならおさえておきたい蒸留方法とは
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ウイスキーに興味がある方なら、単式蒸留、連続式蒸留という言葉を聞いたことがあるかもしれません。この2つは、ウイスキーやジン、焼酎など蒸留酒の代表的な蒸留方法です。
紀元前に発明されたアランビックによる蒸留酒造りを基にした、原始的な単式蒸留器と、19世紀に発明された、高濃度のアルコールを大量生産できる連続式蒸留機です。
アルコールの蒸留は、水とアルコールの沸点の違いを利用しています。水は100℃で沸騰して気化(液体から気体に変化)しますが、アルコールは78℃で気化します。発酵過程で造られたアルコール度数7~8%のモロミを、複数回蒸留して、アルコール度数を高めているのです。
今回は難しく聞こえるウイスキーの蒸留方法について着目し、ウイスキーの「単式蒸留方法」や「連続式蒸留方法」の特徴をわかりやすく解説していきます。
また、以下記事にて、初心者の方でも飲みやすいウイスキーの選び方をご紹介しています。
「初心者におすすめなウイスキーは何?」という方はぜひ参考にしてください。
参考記事:【おすすめ銘柄10選】初心者向けに飲みやすいウイスキーの選び方
目次
原料の風味を活かす、原始的な単式蒸留
単式蒸留は、銅製のポットスチル(単式蒸留器)で蒸留します。ウイスキーの場合、アルコール度数7~8%のモロミは、1回目の蒸留(初留)で20%半ばになり、2回目の蒸留(再留)でできたニューポットはアルコール度数70%前後になります。原料である麦芽の風味を残す蒸留方法です。
多くのスコッチウイスキーやジャパニーズは2回蒸留、多くのアイリッシュウイスキーは3回蒸留を行います。ポットスチルの大きさや形、ネックの長さなどで得られる原酒に違いがあるため、各蒸溜蒸留のポットスチルは、求める酒質によって様々な形をしています。
単式蒸留器で造られる主な酒類
・モルトウイスキー(スコッチ、ジャパニーズ、アイリッシュ)
・コニャックブランデー
・乙類焼酎(本格焼酎)、泡盛
・プレミアム・クラフトジンなど
連続式蒸留より原料からアルコール蒸留の歩留まり率や時間的コストがかかる反面、できあがるアルコールに原料由来の風味が残りやすいのが特徴です。
単式蒸留器があれば、原料や蒸留方法を変更すれば上記の酒類を造り分けられるため、ひとつの蒸留所でウイスキーとジン、ブランデーなどを蒸留することもあります。
ウイスキーと焼酎は蒸留過程が似ているため、ウイスキー製造免許を持たない九州の焼酎蔵の中には、麦焼酎や米焼酎を海外に輸出、樽詰めして、その国のウイスキーの定義を満たすことで、ウイスキーとして販売している例もあります。
効率的に大量の高濃度アルコールを造る、連続式蒸留
一方で連続式蒸留機は、一度モロミと蒸気を入れると、中身を入れ替えることなく、連続で蒸留できる巨大な装置です。
巨大な塔型の中は棚状に細かく仕切られていて、仕切られた空間ごとに蒸留を繰り返すことで、アルコール度数90%以上の高アルコールを蒸留する方法です。
連続式蒸留機はほぼ無味無臭の中性スピリッツとも呼ばれるニュートラルスピリッツも造られるくらい、原料由来の風味が残りにくいです。日本酒に添加される醸造アルコールや、旧3級のような安いウイスキーの原材料にあるスピリッツも、ニュートラルスピリッツです。
ライトな風味のカナディアンウイスキーと比べてバーボンに風味があるのは、アルコール度数80%以下で蒸留すること(カナディアンには度数の規定なし)、樽の内側を焦がしたアメリカンホワイトオークの新樽に詰めて熟成するため、樽の香味がウイスキーに移りやすいことが理由です。
連続式蒸留機で造られる主な酒類
・グレーンウイスキー
・ウイスキー(バーボンなどアメリカンウイスキー、カナディアン)
・アルマニャックブランデー
・ウォッカ
・甲類焼酎
・ニュートラルスピリッツ
単式蒸留と比較して、大量生産に向いているため、比較的リーズナブルなお酒が多いです。ほとんどのバーボンやアメリカンウイスキーでは、ビアスチルとダブラーという連続式蒸留機を使用していますが、プレミアムバーボンの「ウッドフォードリザーブ」のように、ポットスチルで3回蒸留している例も。
近年増殖中のクラフトディスティラリー(小規模蒸留所)では、連続式蒸留機以外に、単式蒸留器や、単式と連続式蒸留機を組み合わせたようなオリジナルの蒸留器など、ユニークな設備を導入するところもあります。
単式蒸留と連続式蒸留の違い
蒸溜方法 | 単式蒸留器 | 連続式蒸留器 |
---|---|---|
度数 | 70度前後の度数 | 90度前後の度数 |
味わい | 原料の風味を残しやすい | 原料由来の風味が残りにくい |
特徴 | 手間がかかる コストが高い | 大量蒸留が可能 コストが安い |
造られる酒類 | モルトウイスキー(スコッチ、ジャパニーズ、アイリッシュ) コニャックブランデー 乙類焼酎(本格焼酎)、泡盛 プレミアム・クラフトジンなど | グレーンウイスキー ウイスキー(バーボンなどアメリカンウイスキー、カナディアン) アルマニャックブランデー ウォッカ 甲類焼酎 ニュートラルスピリッツ |
単式蒸留器と連続式蒸留機をセットで持つ、ジャパニーズウイスキー
スコッチのブレンデッドウイスキーの場合、モルトウイスキー、グレーンウイスキーをそれぞれ異なる蒸留所から購入してブレンディングすれば済みますが、日本のサントリー、ニッカウヰスキーとキリンは、自社の原酒だけでブレンデッドウイスキーを造れるよう、ポットスチルと連続式蒸留器の両方を自前で持っています。
ニッカのカフェ式連続式蒸留機(カフェスチル)は、1830年に開発された古いタイプで、1963年に導入された時点でも生産効率が悪い旧式でした。終売になった「ニッカカフェモルト」や「ニッカカフェグレーン」「カフェジン」や「カフェウォッカ」は、すべて旧式のカフェ式連続式蒸留機があるからこそ造られるクリーンになり過ぎず、原料由来の風味が残っています。
まとめ
今回はウイスキーの蒸留方法についてご紹介しました。
ウイスキーだけの蒸留方法だと思っていましたが、様々な酒類にも使われる蒸留方法だったのですね。
また日本のウイスキーには両方の蒸留機を持っているので、蒸留方法による味わいの違いを飲み比べてみても面白いかもしれませんね。
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